今回は、2024年の日本ハムの躍進を支えたロッテ戦での圧倒的な強さ、そして新庄剛志監督が浸透させた「先発完投」の哲学について解説します。

ロッテから量産した“貯金12”が順位を大きく左右した
2024年シーズン、日本ハムが最も相性良く戦えた相手はロッテでした。
パ・リーグ5球団+交流戦の対戦成績は下記の通り。
- 対ソフトバンク:12勝12敗1分
- 対ロッテ:18勝6敗1分
- 対楽天:13勝10敗2分
- 対オリックス:12勝12敗1分
- 対西武:13勝10敗2分
- 交流戦:7勝10敗1分
この年の日本ハムは 75勝60敗8分。
そのうちロッテ戦で計 12の貯金 を作っており、この数字が最終順位を押し上げた重要な要因となりました。
新庄監督就任後のロッテ戦成績は
- 2022年:11勝14敗
- 2023年:11勝14敗
と負け越していたため、2024年の大幅な勝ち越しぶりが際立っていますね。
“ロッテキラー”加藤貴之が抜群の存在感
ロッテ戦の中心にいたのが左腕・加藤貴之投手です。
2024年のロッテ戦成績は以下の通り。
- 7試合登板
5勝1敗
防御率1.85
通算でも
- 20勝6敗
勝率.769
という圧倒的な数字を残しており、文字通り“ロッテキラー”と呼ぶにふさわしいでしょう。
仮にロッテ戦18勝6敗が 12勝12敗 の五分だったとすると――
- 日本ハム:75 → 69勝66敗8分
- ロッテ:65 → 77勝60敗6分
順位は完全に逆転していた計算になります。
つまり、加藤投手のロッテ戦での活躍は、2024年2位躍進の最重要要因と言っていいでしょう。
新庄監督が根付かせた「先発完投」の文化
もう1つの大きな功績が、江本孟紀氏も評価している「完投グセ」です。

ただ完投を増やしただけではなく、先発投手が“完投を意識してマウンドに立つ習慣”を作った点が大きいでしょう。
パ・リーグ全体の完投数(2022〜2025年)は以下の通りです。
2022年
オリックス9
ソフトバンク8
西武2
楽天3
ロッテ3
日本ハム9
2023年
オリックス5
ロッテ1
ソフトバンク4
楽天1
西武10
日本ハム8
2024年
ソフトバンク5
日本ハム11
ロッテ9
楽天6
オリックス5
西武6
2025年
ソフトバンク5
日本ハム23
オリックス6
楽天3
西武10
ロッテ4
2025年は 23完投 と他球団を圧倒。
近年のプロ野球では極めて珍しい数字であり、新庄監督の投手運用方針が完全に定着した結果といえますね。
完投した日本ハム先発陣(2025年)
- 伊藤大海:27試合 14勝8敗 防御率2.52 完投6
- 北山亘基:22試合 9勝5敗 防御率1.63 完投4
- 加藤貴之:20試合 9勝6敗 防御率3.40 完投3
- 金村尚真:28試合 5勝7敗5H 防御率2.93 完投4
- 山﨑福也:20試合 7勝5敗 防御率2.27 完投2
- 達孝太:16試合 8勝2敗 防御率2.09 完投3
- 古林睿煬:7試合 2勝2敗 防御率3.62 完投1
昔なら珍しくない光景ですが、継投主流の令和では“異例”の現象ですね。
新庄監督が見ているのは「野球の本質」
江本氏が強調しているのは、この点で
- 先発はできる限り長く投げるべき
- “100球だから交代”という思考はナンセンス
- ピンチを乗り越える経験こそ投手を育てる
新庄監督の考えは「投手を育成しながら勝つ」という本質に根ざしており、チーム力の底上げにつながりました。
日本ハムが2位へ飛躍した背景には、ロッテ戦で確実に勝ち切った戦略性 と先発完投という新庄哲学の浸透という2つの大きな柱があると思います。
この両輪がかみ合ったことで、日本ハムは再び強いチームへと変貌を遂げつつあります。
2026年シーズンにはさらなる期待が持てるでしょう。


