球界のご意見番として知られる江本孟紀氏は、日本ハムの新庄剛志監督について「誰よりも“野球の本質”を見ている」と高く評価しています。
若手を思い切って起用し、ロッテからしっかり勝ち星を重ね、先発投手には完投を求める。
2年連続最下位からの急躍進は決して偶然ではなく、その土台には新庄監督の一貫した哲学が存在するという。
ここでは著書『長嶋亡きあとの巨人軍』の内容をもとに、その背景を解説していきます。
新庄監督を推す理由は“本質をとらえた改革”
江本氏が現在のプロ野球界で「推したい」と語る監督の1人が新庄剛志監督です。
新庄監督が就任したのは2021年10月。
当時の日本ハムは5位でシーズンを終え、さらに問題行動を起こした中田翔を巨人へ無償トレードで放出。
西川遥輝や大田泰示といった主力も事実上の自由契約となり、チーム再構築の真っ最中でした。
その中で新庄監督は明確な方針を持っていた。
それが「若手の抜擢」でした。
若手を積極起用し、未来をつくる采配
新庄監督は、年齢やドラフト順位にとらわれず、実力と可能性を見て選手を起用してきた。
・万波中正（2018年ドラフト4位）
・田宮裕涼（2018年ドラフト6位）
・上川畑大悟（2021年ドラフト9位）
・水野達稀（2021年ドラフト3位）
こうした“未来の主軸候補”たちを一軍で積極的に起用し、実戦の中で育てるスタイルを取りました。
チーム編成が大きく揺れ動く中でも、若手に実力を発揮させる環境を整えた点が特徴的でしたね。
主力の流出も“進化のきっかけ”になった
監督1年目のシーズン終了後、近藤健介がソフトバンクへFA移籍した。
「優勝を狙えるチームで戦いたい」という本人の意志による移籍ではあったものの、この流れも日本ハムにとっては大きな分岐点になりました。
既存戦力が抜けたことで、
・若手を育てる必要性が増した
・チーム構造を一から作り直す覚悟が固まった
という効果が生まれたのです。
2023年シーズンこそ再び最下位となったが、若手中心の編成に切り替わったばかりの時期であり、実戦経験を積ませながら土台を整える“成長の時間”となりました。
2024年、ついにチームは開花し2位へ躍進
地道に育ててきた若手が戦力として形になり、2024年シーズンはついに2位に浮上。
その裏には、新庄監督の計算された戦い方がある。
江本氏が指摘するポイントは、
「対戦相手の中に“勝ちやすい相手（カモ）”をつくり、確実に貯金を稼いだこと」
という点です。
特にロッテ戦ではしっかり勝ち星を重ね、順位を押し上げる強さにつながりました。
若手育成と勝ち星のマネジメントを同時に進めたことで、チームは一気に上位争いができる集団へと変貌したのです。
新庄監督の野球には派手なイメージが先行しがちだが、根底には「本質から逆算した育成と競争」があるとおもいます。
江本氏が“いま最も推したい監督”と語るのも、その裏側に確かな戦略と哲学が存在しているからでしょう。
この変革はまだ途中段階で、今後の日本ハムがどこまで強くなるのか──注目が集まりますね。
