今回は、新庄剛志監督がシーズン終盤からドラフト会議にかけて語ったコメントを軸に、発言の背景や意図を整理しながら、監督がどのように選手を評価し、どう向き合っているのかを分かりやすくまとめました。
崖っぷちでも鼓舞し続けた言葉
選手・ファンが胸を熱くしたのが、クライマックスシリーズでの一言です。
「一生懸命にやった結果なんで、明日、明日から四つ勝ったらね、またドラマが起こるんで。これもまた面白い。とりあえず、明日は勝たないといけないから」(10月16日、みずほペイペイドーム福岡で)
ここで語られた内容は、チームが崖っぷちに追い込まれていた状況でのメッセージです。
ソフトバンクとの最終ステージで3連敗し、あと1つ負ければ敗退という場面でしたが、監督は悲壮感よりも“可能性”に視点を置き、選手を精神面から支えました。
この前向きさは選手にとっても大きな支えとなり、流れを切らさない理由にもなったでしょう。
3連敗→3連勝→最終戦へ…死闘を終えた後の言葉
激闘が終わった後も新庄監督らしい前向きな締めくくりでした。
「いや、めちゃくちゃいいファイナルだったし、めちゃくちゃいいシーズンでしたね。やっぱりシーズン通して頂点を取ったソフトバンクさんが日本シリーズに、1位同士が行くのが日本シリーズなんで、僕たちが行くべきじゃないと。でも来年はまだまだ強くなる。ちゃんと優勝して日本シリーズに行く準備をします」(10月20日、みずほペイペイドーム福岡で)
3連敗から3連勝へ引き戻し、最終第6戦まで競り合った末の惜敗。
悔しさがあっても、監督はまず相手への敬意を示し、同時に翌年への明確な目標を言語化しています。
これによって、選手もファンも前を向きやすくなり、チームとしての結束感が深まりました。
迷信に頼らず“勝ちのルートを増やす”という姿勢
ドラフト前日、スカウト会議後の発言からは、監督の価値観が垣間見えます。
「験担ぎ? 俺はしない。例えば、この道を通って試合で勝っても、俺はまた違う道を行くタイプだから。こっちの道でも、あっちの道でも、もう勝つ道を増やした方がよくないですか。この道でって思うタイプの選手とかは、その勝った道を通って、信号機で止まっていたから、また止まろうって。そうやって(青信号を)待つ選手は多いと思いますけど、僕は全然そういうの関係がないんで。逆を行きたいタイプなんで。(笑)」(10月22日、東京都内で)
監督の姿勢は「依存」より「選択肢を増やす」方向にあります。
特定の儀式やルーティンに縛られるより、どんな状況でも成果を出せる柔軟なメンタリティを重視するタイプです。
ドラフトに臨む姿勢としても、この柔軟性と発想の広さがそのまま生かされています。
「化ける選手」の見分け方とは何か
監督が最も本質的な考えを語ったのが、ドラフト指名後のコメントです。
「(ドラフト)1位でとった選手が必ず活躍するとは限らないんでね。僕は5位なんですけど、5位の選手でも3位の選手でも、どういうふうに化けていくかっていうのは指導法にもかかっていると思う。あとは、すぐにでもグラウンドでプレーをしたいっていう強い気持ちを持っている選手は、すぐにグラウンドに立てる。(自分は)練習からそういう姿を見ているし、取り組み方とか、人間性も含めて。礼儀正しいかとかもね。そういうところを見ています」(10月23日、東京都内で)
この内容から、新庄監督が重視するポイントがはっきり浮かび上がります。
- 指名順位ではなく“伸びしろ”
- 技術よりも“気持ちの強さ”
- 練習への姿勢や継続力
- 礼儀・人柄・チームへの適応性
監督自身も阪神からの5位指名から這い上がり、メジャーまで到達した経験を持つからこそ、順位よりも「意欲」を重視する視点が確立されています。
ドラフト選手へのエールに込められた意味
日本ハムはこのドラフトで、大川慈英投手(明大)ら支配下5名・育成2名を指名しました。
監督は自身の過去を踏まえながら、すべての選手に公平な目線と期待を寄せています。
“化ける可能性”は順位とは無関係で、日々の取り組みと人間性を重視する哲学は、これからプロ生活を迎える選手にとっても大きな励みになるでしょう。
新庄監督の言葉には派手さの裏に、選手を深く観察し、丁寧に向き合う姿勢が一貫して流れています。
ルーキーたちがどのように成長していくのか、来季の日本ハムにも期待が高まりそうです。

