「ボスじゃないとできない」新庄流采配の真意
日本ハムの新庄剛志監督(53)は今季も野球界を驚かせる采配で注目を集めました。
他球団では考えられないような起用や演出を次々と仕掛けるその姿はまさに“新庄劇場”。
しかし、それは単なる話題づくりではなく、選手一人ひとりへの深い理解と観察に基づいた「根拠ある采配」なのです。
選手たちが口をそろえて「ボスじゃないとできない経験」と語るのも納得です。
投手・山崎を「3番打者」に抜擢した理由
3月6日に行われた西武とのオープン戦(エスコン)で、新庄監督は驚きのオーダーを発表しました。
なんと、左腕投手の山崎を「3番・指名打者」として起用したのです。
山崎は高校時代、将来の夢を「日本ハムの3番打者」と語っていた選手。
その情報を知った新庄監督は、夢を現実にしてあげようとこの起用を決断しました。
山崎は「思いっきり楽しみました。感謝の気持ちでいっぱいです」と語り、その後も先発投手として20試合に登板、防御率2.27という好成績を残しました。
まさに“夢を叶える采配”が選手の潜在能力を引き出した象徴的なシーンでした。
チーム最年長・宮西に託した“裏方の使命”
クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージの初戦では、チーム最年長の宮西が特別な役割を担いました。
現役投手でありながら、継投策を支える“戦略サポート”という異例の任務を任されたのです。
宮西は「選手としてマウンドに立ちたい思いはあるけど、ボスなりの表現だと思う。
次のステージを見据えての配慮も感じる」と話し、新庄監督の深い意図を理解していました。
単に“采配”というより、“人間としての成長機会”を与える采配といえます。
「複数ポジション主義」に隠された意図
内野守備走塁コーチの谷内氏は現役時代、新庄監督の下でプレーした経験を持ちます。
今では指導者として間近で監督の思考を感じ、「選手のことをすごく考えている」と語ります。
その代表例が「全野手に複数ポジションを守らせる方針」です。
谷内コーチ自身は「本来はポジション固定が理想」と考えながらも、監督の意図を理解しています。
「出場機会を増やすためにどうすればいいかを常に考えている。監督の狙いは、選手全員にチャンスを与えるための工夫なんです」と語るように、新庄監督の采配には“選手ファースト”の哲学が貫かれています。
「ずーっと見てますから」──選手を包み込む親心
新庄監督は「鎌ケ谷のファームも含めて、ずーっと見てますから」と語り、トップチームだけでなく若手育成にも目を配っています。
その姿勢はコーチ陣にも浸透し、チーム全体に“見守る文化”が根付き始めています。
監督・コーチ・選手が同じ方向を向き、互いを信頼し合う環境が生まれたことで、日本ハムのチーム力は確実に底上げされました。
“新庄劇場”は単なるパフォーマンスではなく、選手の夢や努力に真摯に寄り添う采配の形。
そこには、監督としてだけでなく、一人の「親」としての愛情が感じられます。
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